どうやら春はもう来ていたらしい。
◇
どうにも床屋に行く事を億劫に感じて困ってしまう。
頭髪の御世話が多くなる年齢になってしまったので
とにかく時間がかかる所為でもあるのだけど、
考えるまでもなく、床屋なんて行くだけである。
行って座っていれば他人がなんとかしてくれる。
私なんかいつも眠ってしまっているのだから。
(楽な客なのか、嫌な客と思われているのかは知らない)
◇
目を覚ました時に、小さな男の子の泣き声がした。
私の座っている位置からは全く姿が見えないので
何をそんなに一生懸命泣いているのかは分からなかった。
幼い時分は、床屋は怖い処だったろうか?
◇
寝てればすぐに終わるんだから楽にしてなよ、と
男の子に言ってあげれば良かったのかもしれない。
◇
楽な客なのか、嫌な客と思われているのかは
知らないけど。